
カナダ人は、カナダの国旗が大好きだ。誰もが知っている、あの赤いカエデの国旗の話だ。これほどまでに自国の国旗が好きな人たちは、カナダ以外ではそうそういないだろうと思う。例えばカナダでは、こんな「国旗セット」が売られている。旅行に行くときはカバンだのなんだの、持ち物にはみんな国旗を付けて行こうということだと思うのだけれど、日本人の感覚からするとかなり異常だ。
もし日本で、カナダ人と同じぐらい「日の丸」が好きという人がいたら、ちょっと変わった人だとか、特定の思想の持主なのかな?などと思われるのがオチだ。いや、どんな考え方の人でも、荷物を「日の丸づくし」にする日本人はあまりいないだろう。そんなカナダ国民が愛してやまないカエデの国旗が使い始められたのは1965年のこと。印象は非常に強いけれど、意外にもその歴史はさほど長くはない。
それ以前はイギリスの旧植民地によくあるように、左上にユニオンジャックがある赤地の国旗を使用していた。そして時の首相、レスター・ピアソンが新しい国旗を作ろうと考え、結果としてこの写真のミシンが重要な役割を果たすことになる。オタワにある「国立カナダ歴史博物館」に、このSINGERのミシンがぽつんと展示されている。国立博物館に突然、ミシンだ。経緯を知らないと何のことだかさっぱり分からない。ちなみにピアソンというのはカナダ史上、かなり立派な首相と位置付けられているようで、カナダ最大の都市、トロントの空港は「トロント・ピアソン空港」と名付けられている。まあ、日本ではこういうことは避けていただきたいと思うのだが。成田や羽田や関空に総理大臣の名前が付いたりするのは、ちょっとどうかと思う。
それはさておきピアソン首相、実は新しい国旗を決めるにあたり、紙に書かれたデザインだけではよく分からないから、実際にポールではためく感じを見たいよね、的なことを言い出したんだそうだ。そう言われたお役人が困って、妹さんに頼んだんだそうだ。ちょっと急いで見本の旗を作ってくんない?的なことを。で、旗を作った妹さんがこの女性で、その時に使われたのがこのミシンだ。だからミシンは今、国立の歴史博物館に鎮座ましましている。日本だったらミシンを展示するなんて発想すら出てこないだろう。でも、このミシンはやはりここに展示されるべきなのだ。なにしろカナダ人の国旗好き、世界の誰もが知るカエデの国旗が、このミシンから生み出されたのだから。それにしてもだ、カナダ人ほど自国の国旗をこよなく愛せたとしたら、それはそれで、この上なく幸せなことかもしれない。
オバマ・クッキーから見えること
しあわせ写真
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カナダで売られている「国旗セット」
カナダ人の国旗好きを象徴するような商品だと思う。日本でこれと同じような「日の丸セット」を買おうとしても、どこで売っているのかちょっと思いつかない。