
カルガリーには、夜になると大勢のカウボーイ姿の人が集まる酒場がある。ダウンタウンから少し車を走らせると巨大な納屋のような建物が現れる。これが「RANCHMAN’S」だ。
とにかくみんな酒を飲み、おしゃべりをし、ダンスを踊り、ロデオマシーンにチャレンジするという説明不要の陽気な酒場。スタッフもみんなカウボーイにカウガールだ。
少し酒が入ってきたからだろうか、カウガールではなさそうな普通の女性たちが、われ先にとロデオマシーンに挑戦し始めた。なぜか男性は一向に手を上げず、女性ばかりが次々とロデオマシーンに挑んでいく。女性陣の次に男性陣、といった順番でもあるんだろうか。
このロデオマシーン、われわれ日本人の想像をはるかに超えるほど激しく動き回るけれど、女性の挑戦者は後を絶たない。男たちが名乗りを上げないのは、下手をうつと今晩はモテる可能性がゼロになるということかもしれない。
みんなそう簡単に振り落とされたりはしない。どこかで練習したりしているんだろうか。こういう時の「度胸」というのは間違いなく女性の方があるんだと思う。
女性陣の挑戦がひとしきり終わったところで、今度は男性陣が徐々にロデオマシーンに挑み始めた。確かにロデオの腕は見事なもので、両手を離して牛をコントロールし続けた猛者もいたけれど、彼女たちの潔さを見た直後だったので若干、興ざめしてしまった。
「RANCHMAN’S」にはなかなか渋いナイズミドル的な人たちもたくさんいて、グラスを手に楽しくおしゃべりしていた。こういう年代の人が明るく酒をのみ、ダンスをしたりできる場所というのはなかなかいい。
ファーストネーションズの女性たちのグループも、誕生日のお祝いで和気あいあいとやっていた。もちろん御覧の通り、「ちゃんと家に帰れよ」と声をかけたくなるぐらい盛り上がっている若者たちもいる。
カメラをぶらさげた僕を店のオフィシャルカメラマンか何かと勘違いしたらしく、キャーキャーいいながらシャッターを押してくれと頼んできた女性たちもいた。あまり飲み過ぎちゃダメだよ。
「RANCHMAN’S」はただの酒場ではない。ロデオ大会で栄冠に輝いたカウボーイたちのトロフィーなどが展示されている博物館でもある。
目を上げると、栄冠に輝いたカウボーイたちが寄贈したのだろう、立派なサドルが天井からぶら下げられていた。だから、ここでグラスを傾けることはロデオ競技の歴代のヒーローたちに敬意を表すということでもある。という言い訳をした上で、もう一杯おいしいお酒をいただくこととしよう。(つづく)
※この記事は2015年の取材に基づいて執筆しています。
しあわせ写真
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大人も楽しくやれる「RANCHMAN’S」
ロデオを楽しむような若者だけでなく、「RANCHMAN’S」にはナイスはミドルもたくさん。新橋の居酒屋みたいなのではなく、大人がこうして飲める場所があるというのも、なかなかいい感じだ。