旅の物語

「TSUNAGARI(ツナガリ)旅」に出よう

第8回 世界一周と赤レンガ倉庫

函館、そしてカナダ

〔写真:かね尺に森の字が記された赤レンガ倉庫〕
函館を愛したユースデン領事が、ロンドン郊外の自宅を「ホクカイドー」と名付けていたことは、わざわざ函館から元領事夫妻を訪ねた人物の著書によって伝えられた。その人の名は渡邊熊四郎氏という。

〔写真:熊四郎氏はナイアガラの滝も訪れていた〕
彼は実業家としてビジネスをするだけでなく、稼いだお金を小学校の建設や新聞社の設立など、函館発展のために役立てた。ユースデン領事が提唱した函館公園の建設にも大金を寄付するなど協力を惜しまなかった。だから1892年、世界一周の旅に出た熊四郎氏はその途中、イギリスで「豆コンシロ」を訪ねて旧交を温めたのだ。カナダとのツナガリでは、熊四郎氏がナイアガラも訪れていることを記しておきたい。

〔写真:火災から荷物を守るレンガづくりの倉庫〕
洋物店、時計店、洋服の仕立てなどさまざまな商売を営み、世界一周からの帰国後には旅で得た知見をもとにビール工場も開設。そこに設けられたビアガーデンは日本初のビアガーデンかも?と言われているそうだ。熊四郎氏は、荷物を預かる営業倉庫も営んだ。たびたび大火に見舞われた函館で、預かった荷物を火災から守るため屋根までレンガで作られた倉庫は今、「金森(かねもり)赤レンガ倉庫」として観光名所になっている。

〔写真:本州と北海道を結ぶ北海道新幹線〕
青函トンネルの開業と青函連絡船の航行終了というタイミングに合わせ、徐々に預かる荷物が減っていたレンガの倉庫は商業施設に生まれ変わることになった。施設内にはいろいろなショップや飲食店のほか、熊四郎氏のビアガーデンが日本初かも?という話にちなんでビアホールも設けられた。そして12月のクリスマスシーズンになると、この赤レンガ倉庫の目の前の海に巨大なクリスマスツリーが浮かぶのだ。

〔写真:赤レンガ倉庫の前に登場する巨大なツリー〕
函館市の姉妹都市であるカナダのノヴァ・スコシア州の州都、ハリファクス市から毎年プレゼントされる「もみ」の巨木が見事にライトアップされ、「はこだてクリスマスファンタジー」を彩るのだ。巨木は大西洋に面したハリファクスから貨物列車で北米大陸を横断し、バンクーバーからは船で北海道まで運ばれる。毎年、太平洋をはさんで続けられる巨木のプレゼントのことをしみじみ感じながら、海に浮かぶツリーを見てほしい。人が旅をして行き来し、ツナガリを持つことには想像以上に大きな意味があるのだ。
⇒〔続きを読む〕第9回 函館はおいしい

 

しあわせ写真

金森(かねもり)赤レンガ倉庫

函館湾の目の前に立つ赤レンガの倉庫。火災から荷物を守るため屋根までレンガでつくられ、その重みを支えるために柱や梁に丈夫なヒノキが使われている。