旅の物語

「TSUNAGARI(ツナガリ)旅」に出よう

第14回 高知はおいしい

高知、そしてカナダ

〔写真:高知で食べたカツオの塩たたき〕
シリーズ「TSUNAGARI(ツナガリ旅)に出よう」の高知編のスタートとなる今回は、まず「高知はおいしい」という話をしておきたい。高知には土佐和紙(とさわし)の取材を目的に赴いたのだが、本題はいったん脇に置いておき、初回はどうしても高知の食について語りたいのだ。はっきり言うと、「カツオの塩たたき」がこれほどおいしいとは知らなかった。

〔写真:アナゴの稚魚である「のれそれ」〕
軽く塩がしてあって、スライスした生ニンニクとワサビでいただく。そもそもカツオ自体、味も身のしまり方も違うのだが、加えて、今まで当たり前のようにポン酢で食べていたのが後悔されるほど塩と生ニンニクがカツオのうま味を引き出してくれる。お店の大将から「のれそれ」もお勧めですよと言われ、「よく分からないけど、じゃあそれを」と言って出てきたのがこれ。

〔写真:高知を代表する日本酒のひとつ「酔鯨(すいげい)」〕
「のれそれ」とはアナゴの稚魚だ。そのうちの1匹を箸で持ち上げると、白く透き通っていて平べったい形をしていた。これが成長するとアナゴになるのだ。何匹かまとめてツルツルっといただくと、口の中にさわやかでいい感じの甘味が広がった。またまた知らなかった味に出会うことができた。幸せだ。
地元の味には地元の酒を合わせたい。

〔写真:高知市内は、歩道のタイルまでカツオで彩られていた〕
高知を代表する日本酒の1つ「酔鯨(すいげい)」。この酒の名前が、大酒のみだった幕末の土佐藩主、山内容堂(やまのうち・ようどう)にちなんだものであることは多くの人が知るところだろう。クジラが行き交う豊かな海を擁する土佐の酔っ払いの殿様、ということだ。

〔写真:高知駅前にある坂本龍馬らの巨大な像〕
高知のおいしい食の話も織り交ぜながら、土佐和紙の話をしていきたい。土佐和紙は、はるか遠くカナダの北極近くに暮らすイヌイットの版画にも使われている。また世界各地の文化財の修復などにも使われているすぐれものだ。にもかかわらず土佐和紙が、いや日本の和紙全体が、材料となる楮(こうぞ)などを栽培する人が減り、和紙を漉(す)くための道具をつくれる人もいなくなって危機的状況にあるという。原稿という形で発信することにより、カナダともツナガリのある和紙づくりが続いていくための力になりたい。などと壮大なことを考えながら原稿を書き進めていこう。
〔続きを読む〕第15回 和紙づくりの「足もと」

しあわせ写真

南国土佐で味わった「カツオの塩たたき」

カツオの塩たたきは、たっぷりの生ニンニクのスライスとともにいただく。高知の人がみんなこの食べ方をしているなら、さぞかし翌日は、と思うのだが、これだけおいしいと、翌日のことなんでどうでもよくなってしまうのだ。