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しあわせの絵の具

ノヴァ・スコシア州

最近、Amazonのプライムビデオでようやく、2018年3月公開の「しあわせの絵の具」という映画を見た。カナダの大西洋側、日本ではあまり馴染みがないであろうノヴァ・スコシア州というところにある港町が舞台だ。子どものころから重いリューマチを患い、とても「しあわせ」とは言えない境遇にあったモード・ルイスという女性が、素朴でなんとも温かみのある「しあわせ」な絵を生み出し続けるストーリーだ。

寡黙でぶっきらぼうなエベレットという魚の行商をして暮らす男の家に家政婦として住み込みで働くことになり、やがて2人は心を通わせるようになって結婚するのだが、なんだかこう、社会の片隅で寄り添いながら暮らす「小さなしあわせ」たいな感じがすごく伝わってくる映画なのだ。海辺の寒々しい場所にポツンと建つ、隙間からきっと風がビュービュー吹き込んでくるような家で、自分たちのことを「ひと組の古い靴下」などと表現したりする場面もある。

モードは不自由な体ながらもペンキを使って木の板に素朴な絵を描き、さらには壁にも窓ガラスにも絵を描き続け、ついに家を自分の絵で埋め尽くしてしまう。家は「ペインテッドハウス」と呼ばれた。そんなモードがテレビで取り上げられて評判を呼び、絵を買い求める観光客が家に押し寄せてくるようになる。その人気ぶりは、アメリカのニクソン大統領から絵の注文が来るほどだったという。このブログで紹介している写真は映画の公開当時、東京のカナダ大使館で展示されていたモードの作品のレプリカだ。「しあわせの絵の具」のことを何かの形で文字にしたいとは思っていたのだが、こうしてブログに書いて写真を紹介するまでに、いつのまにか3年近くかかってしまっていた。

カナダというと、どうしてもバンクーバーやカナディアンロッキーやケベックやプリンスエドワード島などが目立ってしまうのだが、ノヴァ・スコシアなど、ちょっと地味な場所にも目を向けてほしいと思う。と、言いながら、僕はまだノヴァ・スコシアには行ったことがない。「ペインテッドハウス」は1984年にハリファクスのノヴァ・スコシア博物館に移築されたそうなので、訪れる機会があったらぜひ見てみたい。ハリファクスはヨーロッパからの移民をカナダに受け入れてきた玄関口のような港で、カナダ史を知る上で欠かせない“Canadian Museum of Immigration at Pier 21”という興味深い博物館もある。また、ここはあのタイタニック号の救助に向かった港でもあり、タイタニックに関する資料を展示した博物館もある。カナダにはいろいろな側面、魅力があるのでそれを知ってほしい。それから話は戻るけれど、「しあわせの絵の具」もぜひお勧めしておきたいと思う。

きっとまたカナダに行ける

しあわせ写真

温かみあふれるモード・ルイスの絵

こういうタッチは、真似をしようとしても絶対にできないのだろうと思う。不思議なあたたかみに包まれている。