旅の物語

カナダB級グルメの旅

第5回 カナダ国民の合言葉

カナダ全土

ティム・ホートンズの存在を「カナディアン・セラピー」と表現したアルバータ州観光公社のダーリーン・フェドローシェンさん。好きなメニューは「メープル・ドーナツ」に「ダブル・ダブル」と言っていた。

メープルシロップを使ったドーナツはいくつかあって、例えばこのドーナツは「カナディアン・メープル」というカナダを象徴するような名前だ。中にたっぷりのクリームが入っている。ほかにも、真ん中に穴が開いた「メープル・ディップ」というドーナツがある。

ティム・ホートンズにはドーナツ以外にも、このページのトップ写真のチリスープのようなメニューがある。カナダの寒い冬には本当にぴったりで、僕も大好きなメニューの1つだ。朝食にはサンドイッチやパニーニ、ベーグルなどが用意されている。オリジナルコーヒーはちょっと味が薄いけれど、深い味わいのダークローストもチョイスできる。飲み物はこのほかに紅茶やホットチョコレート、冷たいスムージーなどもある。

そしてティム・ホートンズの特徴は、なんといっても値段の安さだ。為替レートの問題があるから変動はあるものの、ざっくりとしたイメージで言えば、数百円でコーヒーとドーナツが食べられたり、朝食を済ますことができる。まずはこのコストパフォーマンス、つまり「手軽さ」が人気の秘密だと言っていいと思う。

さて、問題は「ダブル・ダブル」だ。別に「ダブル・ダブル」というメニューがあるわけではない。実はこれ、コーヒーの注文の仕方なのだ。日本のファストフード店でコーヒーを飲む場合、客はコーヒーをブラックの状態で受け取ってから、自分の好みで砂糖やミルクを入れるが、ティム・ホートンズでは客の注文に従って店員が入れてくれるのだ。つまり「ダブル・ダブル」は「double-double」、「砂糖2ークリーム2」を入れてください、というコーヒーの飲み方だと考えればいい。実際には「ダブル・ダブル」というより「ダボ・ダボ」と言った方が正確なので、ここからは「ダボ・ダボ」で統一したい。

ティム・ホートンズではなぜか、多くの人が「砂糖2・クリーム2」の「ダボ・ダボ」を注文する。「1-2」でも「2-1」でもない。「砂糖2-ミルク2」でもない。「ダボ・ダボ」はクリームの場合のみ、「砂糖2・クリーム2」だけが「ダボ・ダボ」なのだ。なぜみんなが「ダボ・ダボ」「ダボ・ダボ」注文するかは謎なのだが、カナダ中で「ダボ・ダボ」「ダボ・ダボ」と言い続けた結果、「ダボ・ダボ」はカナダの辞書にも載るようになってしまった。ここまでくるともう僕には、「ダボ・ダボ」がカナダ国民の合言葉のように思えてきてしまうのだ。
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シリーズ「カナダB級グルメの旅」は2014~15年の取材に基いています。

しあわせ写真

ティム・ホートンズのチリスープ

寒いカナダの冬には、このチリスープの暖かさが本当にありがたい。ボリュムーがあるので、このスープにプラス、何か一品ぐらいで十分「食事」になってしまうほど。