旅の物語

カナダB級グルメの旅

第6回 「ダボ・ダボマシーン」を見た

カナダ全土

ティム・ホートンズの「ダブル・ダブル」、つまり「ダボ・ダボ」を注文すると、店員がコーヒーに「砂糖2・クリーム2」を入れてくれる。これがカナダの辞書にも載っている「ダボ・ダボ」という飲み方だ。

日本のチェーン店では白い「コーヒーフレッシュ」なるものが一般的だ。しかしこれはミルクでもクリームでもない、植物油から作られたものなのだと聞いた。その証拠にずっと常温で置いていても傷んだりしない。しかし、ミルクやクリームならそうはいかないのだ。

実は僕にとって、カナダにおける「ミルク・クリーム」問題は結構、気になる事柄だった。カフェでコーヒーを注文すると青と赤の2種類の容器が出てくる。一般のご家庭にお邪魔した時にも青と赤のコンビを見かけたし、宿泊したホテルの冷蔵庫にも入っていた。エア・カナダの機内のコーヒーでさえも、明確にミルクなのかクリームなのかを聞いてくるのだ。


青には「MILK」と書いてあって「2%」の文字。赤の方には「CREAM」、そして「18%」と書いてある。クリームはミルクから取り出した乳脂肪分で作られるのだから、このパーセンテージは乳脂肪分の割合なのだろう。そしてティム・ホートンズの「ダボ・ダボ」だ。写真のコーヒーカップの蓋に書かれた文字、「2M」はミルク2、「1S」は砂糖1などを表している。そして上の「DD」こそが、われらが「ダボ・ダボ」なのだ。

白状すると、僕は「ダボ・ダボ」と言ってはいても、けっこうおおざっぱに砂糖やクリームを入れているのだろうと思っていた。カップの大きさも「SMALL」から「X-LARGE」まで4種類もあるし、分量は大体このぐらいかな、みたいなノリでやっているもんだとばかり思っていた。しかし僕はティム・ホートンズのカウンターの奥にとんでもない機械を見つけてしまった。ボタンがたくさん並んでいる機械の存在を認識した瞬間、僕は勝手にそれを「ダボ・ダボ・マシーン」と呼ぶことに決めた。

お客の注文を受けると、まずはカップの蓋の記載に従って砂糖を投入する。そしていよいよ「ダボ・ダボ・マシーン」の登場だ。カップの大きさに応じてミルクなのかクリームなのか、ボタンごとに分量が区別されている。このページのトップ写真を見てもらえれば「ダボ・ダボ・マシーン」のすごさが分かってもらえるはずだ。カウンターの奥では明らかに「ダボ・ダボ・マシーン」を使ってミルクだかクリームだかがカップへと注入されている。

それが終わると店員はカップにコーヒーを注ぎ入れて手早くかき混ぜ始めた。砂糖、「ダボ・ダボ・マシーン」、コーヒーと、ここまでの作業はスピード感にあふれていた。僕は一連の流れを望遠レンズでしっかりととらえることに成功した。そして反省した。大体このぐらい、みたいにやっているんだろうと決めつけてしまっていた。本当に申し訳ない。ただしだ、反省しながらも一方で開き直るわけではないが、「ダブル・ダブル=ダボ・ダボ」の謎にここまで迫った日本人は僕ぐらいしかいないんじゃないかという自負もある。ちょっとはティム・ホートンズ側から評価してもらってもいいのでは、などと思うのだが、まあ冷静に考えると、みんなそこまで暇じゃないだけなんだろうとも思っているのだ。
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シリーズ「カナダB級グルメの旅」は2014~15年の取材に基いています。

しあわせ写真

店の奥にあった「ダボ・ダボマシーン」

「SMALL」から「X-LARGE」まで4種類もあるカップに対し、客の注文に応じて適切な量の砂糖、ミルク、クリームを入れることができる(と思われる)機械。この優れものの装置を僕は「ダボ・ダボマシーン」と呼ぶことにした。