旅の物語

ニューファンドランド島から世界を語る

第1回 カナダ最東端の島が忘れられない

ニューファンドランド島

2018年に初めて訪れたニューファンドランド島が忘れられない。同じ名前を持つ犬なら聞いたことはあっても、カナダ最東端の島、ニューファンドランド島を知る日本人はそう多くはないだろう。ちなみに犬の方はこの島にルーツを持っていて、かつ、なかなか役に立つ犬なのだが、その話はいずれまた別の機会にしたい。

とにかくこの島は、僕の想像をはるかに超えていた。僕は取材で20回以上カナダ各地を訪れていて、取材をしてはWEBサイトや雑誌に原稿を書き、本を出版し、講演し、そんなふうにして日本では知られていないカナダの魅力を伝えてきたのだが、そんな僕がニューファンドランド島には心底驚かされた。

これまで取材対象とはしてこなかった島。最果ての地に何があるんだろうと思っていた島。しかしこの島は、壮大な歴史ロマンと「謎」に満ちていた。
フランシスコ・ザビエルはどうして日本まで来ることができたのか、カリブの海賊はなぜラム酒をガブ飲みしているのか、タイタニック号はなぜ沈没したのか、どうしてマクドナルドにはビーフではない「フィレオフィッシュ」なるバーガーがあるのか、カナダ産ズワイガニが日本にたくさん輸入されている理由はなんなのか。

もう「謎」とネタが満載で、しかもそれぞれが世界のさまざまな事象とつながっていた。関わる国やエリアを上げるだけでもポルトガル、スペイン、バスク、アイルランド、アフリカ、インド、マカオ、日本、などなど。数えあげたらキリがない。僕はニューファンドランド島から世界を語り尽くせるとさえ思っているのだ。

ニューファンドランド島を訪れた当時、僕は大阪で暮らしていたので、たどり着くだけでもそれはそれは大変だった。伊丹空港から成田(約1時間20分)、2時間ほどのちに成田からモントリオール(約12時間)、また2時間ほどのちにモントリオールからニューファンドランド島(約4時間)と移動を続けた。
長旅を経てセントジョンズ空港に降り立ったのは、もう日付が変わろうという夜中の12時ごろ。そして真っ暗な中、きょう泊まる宿にようやく到着した。ドアが開かない。入れない。

歴史ある建物を宿泊施設にしたそうで、ホテルのように24時間、誰かがいるわけではない。可愛らしい郵便受けにカギが入っているはずだったのだが、中は空っぽだった。
カギがないから入れない。いきなり寝る場所すらない状態に陥った。どうなってしまうのだろうか。
最果ての島、ニューファンドランド島の旅は、波乱万丈のスタートを切ったのだ。

※この記事は2018年の取材に基づき執筆しています。
⇒〔続きを読む〕第2回 ジェリービーンズ・タウン

しあわせ写真

ニューファンドランド島の風景

ニューファンドランド島の中心、セント・ジョンズのすぐ近くにあるキディビディ(Quidi Vidi)というエリア。小さな入り江と立ち並ぶ建物が実に美しいのだ。