旅の物語

ニューファンドランド島から世界を語る

第3回 ニューフィー・ジョーク

ニューファンドランド島

粗野で学のない漁師たち「ニューフィー」のイメージというと、僕がニューファンドランドで見つけたこのマグカップの絵のようなことらしい。漁の時に濡れても大丈夫なビニール製の黄色い帽子は、ニューフィーとは切っても切れないアイテムのようだ。

それに彼らの話す英語はかなり変わっているようで、カナダ国内でも単語や表現が通じないことがしばしばあるため、「ニューファンドランド・イングリッシュ」なる辞書も出版されている
それにニューフィーたちは長い間、ずっと金持ちに搾取されながらCOD(コッド)と呼ばれる鱈、「タイセイヨウタラ」をとって暮らしてきた。マグカップでニューフィーの横に描かれているのが、そのCODだ。

変な英語を使い、ニューフィーと揶揄(やゆ)され、金持ちから虐げられてきた。だから彼らの中から、どんなつらいことがあっても笑ってそれを乗り越える、“人生泣き笑い”みたいな自虐ネタ「ニューフィー・ジョーク」が生まれた。本まで出版されているので、ちょっとここで紹介しておきたい。
「この袋の中に魚が何匹入っているか当てられたら、両方ともおまえにやるぜ」
分かってもらえるだろうか、このなんとも間の抜けた感じが。「何匹」と聞きながら、「両方」なのだ。

「おい、また遅刻じゃないか。一体全体、ほかのみんなが何時に来てるか知ってるのか?」
「実は知らないんです。だって、おいらが着いた時にはいつも、みんないるんだもん」
下ネタもいっぱいあるのだが、ニューフィー・ジョークはこのぐらいにしておいて、改めてマグカップの絵をよく見てほしい。黄色い帽子をかぶったひげ面のニューフィーと、その左に描かれたCOD。彼らが何をしているのかが問題なのだ。

そう、ニューフィーとCODはキスをしている。ニューファンドランドに来たら、数百年にわたってこの島の生活を支えてきてくれたCODとキスをしなければならない。キスをすれば島の仲間として認められる。これは島の神聖な儀式なのだ。

※この記事は2018年の取材に基づき執筆しています。
⇒〔続きを読む〕第4回 タラとキスしてニューフィーになろう

 

 

しあわせ写真

ニューフィーのマグカップ

黄色い帽子をかぶったニューフィーが、タイセイヨウタラ「COD(コッド)」とキスしている。そのうしろには何やら酒瓶らしきものも。これこそ島の神聖な儀式なのだ。