旅の物語

「TSUNAGARI(ツナガリ)旅」に出よう

第1回 旅が世界を救う

日本、そしてカナダ

〔写真:仁淀ブルーが見られるスポットの1つ「にこ淵」〕
僕は、旅が世界を救うと勝手に思い込んでいる。どこかを旅して美味しいものを食べ、楽しい時間を過ごし、きれいな景色を見る。そうしたことを通じて幾ばくかのお金が動き、忘れられない場所ができ、自分が暮らす土地を気に入ってくれる人が増えていく。旅した人もそれを迎えた側も、両方がハッピーになれるのだ。

〔写真:函館の旅で僕が食した塩ラーメン〕
そんな簡単に世界が救えるなら苦労はないと言われるかもしれないが、そういう斜に構えた人にはこんなふうに返しておきたい。コロナによって人が自由に行き来できなくなっただけで、たったそれだけのことで、どれだけ多くの人が不幸になっただろうかと。もう1つ言うと、じゃあ旅以外に世界を救えるような手段があるだろうかと。

〔写真:このサイトのマーク ⇒「Portage」について
僕はカナダについて講演するとき、いつもこのフレーズで最後をしめくくってきた。
「美味しい、楽しい、きれい」のその先にある心豊かな旅。
その土地の暮らしや歴史、人々の営みをちょっと知るだけで美味しい、楽しい、きれいにプラスして、心豊かな旅が体験できるのだ。「ああ、こんな文化があるからこういう食べものがあるんだ」「この土地の人が親切なのはこういう悲しい歴史があるからなのか」「こんな素晴らしい景色を守るためにものすごい苦労があったんだなあ」といったこと。それが僕の考える心豊かな旅だ。

〔写真:閖上にはカナダ国旗を掲げた建物がある〕
カナダの取材を通じて僕の考え方の軸となったキーワード「美味しい、楽しい、きれい」のその先にある心豊かな旅をもっと広げたい。そこで僕は個人で運営するこのWEBサイト「Portage(ポーテージ)」で新しい連載を始めることにした。タイトルは「TSUNAGARI(ツナガリ)旅に出よう」だ。旅の舞台は日本。行く先々で意外なツナガリが見えてきて、「世の中、意外なところでつながってるなあ」と思えるに違いない。そして旅のあとは、その土地が忘れられない場所となって新たなツナガリが生まれていく

〔写真:高知の和紙工房で目にしたイヌイット版画〕
もちろん、その土地とカナダとのツナガリも紹介したい。函館ではカナダとの意外な関係を知ることになった。東日本大震災の被災地、宮城県の閖上(ゆりあげ)には、なぜかカナダ国旗を掲げる建物があった。高知県の山間部の和紙工房にはカナダのイヌイットの版画が飾られていた。まあ、原稿の大半は、僕が変態的に何かにのめりこんで自分だけ喜んでいる場面になるとは思う。しかし一方で、僕の原稿が世界を救うかも、と勝手に自分に言い聞かせてもいる。それにしても大上段に構えちゃったな、などと思いながらTSUNAGARI(ツナガリ)旅を始めたい。
⇒〔続きを読む〕第2回 函館の時計台

しあわせ写真

高知で出会った仁淀ブルー

僕が高知の旅で出会った神秘の青「仁淀(によど)ブルー」。この写真はそのいくつかのポイントの1つ、「にこ淵(にこぶち)」という伝説を持つ小さな滝つぼ。圧倒的な透明度と青さだった。