旅の物語

「TSUNAGARI(ツナガリ)旅」に出よう

第2回 函館の時計台

函館、そしてカナダ

〔写真:函館にある「オールド・タウン・クロック」〕
函館駅前のホテルの1階、オープンスペースのような場所に時計台がある。
旅の前からこれを見るのを目的の1つと決めていたので、そこそこ気持ちを高揚させながら足を運んだのだが、僕が熱心に写真を撮り続ける間、この時計台に関心を払う人はほとんどいなかったように思う。

〔写真:ハリファクス「オールド・タウン・クロック」〕
この時計台はカナダ大西洋岸、日本から遠く離れたノヴァ・スコシア州の州都ハリファクスにある「オールド・タウン・クロック」を模している。サイズは本物の3分の1スケール。函館市は市政60周年を迎えた1982年にハリファクス市と姉妹都市関係を結び、その縁からこの模型が設置されることになったと聞いた。

〔写真:函館山から望む夜景〕
函館の姉妹都市なら普通は「夜景つながり」と思ってしまうが、実はハリファクスとの縁は五稜郭(ごりょうかく)だ。幕末の歴史に関心のある人ならピンとくるだろう。榎本武揚率いる旧幕部軍がこの五稜郭を拠点に新政府軍と戦い、新選組の「鬼の副長」土方歳三がここ函館で戦死している。

〔写真:桜の季節の五稜郭〕
五稜郭と同じような形をした要塞が、ハリファクスにある「シタデル(Citadel)」だ。2つの星型の要塞が函館とハリファクスを結び付け、姉妹都市にしてくれた。「オールド・タウン・クロック」はシタデルの丘にあるハリファクスのランドマーク的存在なのだ。ペリーが黒船でやってきて江戸幕府に開国を迫ったのは1853年のこと。その結果、伊豆の下田と函館(当時は「箱館」)が開港されることになった。

〔写真:JR函館駅〕
開港場防備のため箱館奉行が置かれ、要塞「五稜郭」も建設されることになった。その完成が1864年というのだから、なんとカナダ建国と同じころだ。
「またカナダつながりかあ」などと感慨にふけっているのは僕ぐらいのものだろうが、そこまでいかなくとも函館駅近くにあるこの「オールド・タウン・クロック」に少し関心を寄せてほしいのだ。

〔写真:函館の地酒「五稜」〕
2022年に函館は市政100周年を迎える。するとハリファクスとの姉妹都市関係も40年の節目ということになる。きっと何かイベントも企画されるに違いない。函館市役所さん、頼んます。函館では54年ぶりに酒蔵が復活し、「五稜(ごりょう)」という名の地酒がつくられるようになった。この五稜を傾けながら、函館とハリファクスの想像もしなかったTSUNAGARI(ツナガリ)に思いを致すのだ。まあ、「オールド・タウン・クロック」を熱心に撮影するオッサンの姿は異様だったろうが気にはしない。楽しいと思うことをやるのが一番なのだ。
⇒〔続きを読む〕第3回 どこも同じはつまらない

しあわせ写真

「オールド・タウン・クロック」

函館市の姉妹都市「ハリファクス」の「オールド・タウン・クロック」の模型が函館駅前のホテル1階スペースにある。機会があったらぜひ立ち寄ってほしい。その由来を知っているのと知らないのとでは、感じ方がまったく違ってくる(と、思う)。