旅の物語

ニューファンドランド島から世界を語る

第4回 タラとキスしてニューフィーになろう!

ニューファンドランド島

「ニューフィー」と呼ばれ、“粗野な田舎者の漁師”みたいな扱いを受けているニューファンドランド島の漁師たち。彼らはそれを逆手にとって、すべてを笑い飛ばすかのような「ニューフィー・ジョーク」を生み出した。そしてもう1つ、ニューフィーが考え出したものがある。それが「スクリーチ・イン(Screech in)」という儀式だ。

なにがすごいって、COD(コッド)と呼ばれるタラとキスをするのだ。にわかには信じられないと思う。なにせ魚とのキスだ。大抵の人はキスしたあと、この写真の男性のように「うへえ~」となってしまう。

しかし、この島を訪れた旅人は、数百年に渡って島の生活を支えてくれたCODとキスすることで初めて島の仲間として認めてもらえる。「タラとキスしてニューフィーになろう!」みたいな、なかなか楽しそうな儀式なのだ。
セント・ジョンズのジョージ・ストリートは、面積当たりのパブの数が北米一だということは既に紹介している。スクリーチ・インはそんなパブから生まれたらしい。

ここ、「スクリーチ・ルーム(THE SCREECH ROOM)」というパブは、スクリーチ・イン発祥の店と言われていて、毎日午後に2回、この儀式が行われている。他の店やホテルで行われるスクリーチ・インではぬいぐるみが使われたりすることもあるが、さすが発祥の店、ここでは冷凍ではあるが本物のCODが登場する。

これがその冷凍COD。本人も生前、まさかこんな儀式で働かされることになろうとは思いもよらなかっただろう。いったいいつまで働かなければならないのか。運命とは数奇なものだ。
そしてその「たたずまい」たるや、もはや何かの御神体(ごしんたい)のようですらある。
さて、すぐに御神体とキスというわけにはいかない。なにしろ島の仲間入りのための大事な儀式だ。メーンイベントの前にはいろいろと段取りがある。それをまずは紹介していきたい。

※この記事は2018年の取材に基づき執筆しています。
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しあわせ写真

CODとキスするスクリーチ・イン

島の生活を支えてきてくれたCODとキスする「スクリーチ・イン」。この儀式を経ることで、旅人は島の仲間として認めてもらえるのだ。