旅の物語

ニューファンドランド島から世界を語る

第5回 ラム酒を一気飲みする

ニューファンドランド島

いよいよCODとキスするスクリーチ・インのスタートだ。まずは店の人がなんだかよく分からないジョークをまくしたてるところから儀式は始まる。「ニューファンドランド・イングリッシュ」なる辞書があることを紹介した通り、ニューフィーの使う英語は島独特の言い回しで、かつ「なまり」もきつい。英語が苦手な僕はもちろんのこと、英語が得意な日本人でも何を言っているのかよく分からないようだ。

しかし、分かる人には分かるようで周囲の人たちは大笑いしていた。きっと「なまり」盛りだくさんのニューフィー・ジョークが連発されているのだろう。しょうもない下ネタも満載のはずだ。
次に出てきたのがハムの切れ端のようなもの。「ボルガナ・ソーセージ(Bologna sausage)」という。上等ではない部位を細かく砕いて作るそうで、ステーキを食べられない貧しい漁師の食べもの、みたいな位置づけだという。

ボルガナの次は「ペパーミント・ノブズ(Peppermint Nobs)」という飴を舐める。地元メーカーの飴なのでニューフィーにはなじみ深いのかもしれないが、どうしてこの飴がスクリーチ・インのルーティーンに組み込まれたのか、よそ者にはさっぱり分からない。
ペパーミントなので、何かのお清めみたいな意味合いなのかもしれない。

さて、ニューフィー・ジョーク、ボルガナ、ペパーミントの飴と続いてきた謎のルーティーンを締めくくるのがラム酒の一気飲みだ。
CODとキスする前に、ショットグラスになみなみと注がれたラム酒を「くいっ」と一気に飲みほす。酒に強くない人はなんだか麻痺してしまって、CODとのキスのハードルが下がるのかもしれない。
まあ、僕なんかはこの程度の酒では全然酔っぱらわないし、そもそもスクリーチ・インにはやる気満々でこの島に来ているので、ハードルなど皆無と言っていい。

一気飲みするラム酒の名前は「SCREECH」という。ラベルの下の方には、小舟を操る漁師に向かってCODを飛び上がっている絵が描かれている。あたかも、まさに漁師とCODがキスせんとす、という感じだ。
CODとラム酒には想像だにしない深い深いつながりがあるのだが、この話は別の機会にじっくりとしたい。とにかく、よそ者が島の仲間と認めてもらうための儀式スクリーチ・インがいよいよクライマックスを迎えようとしているのだ。

※この記事は2018年の取材に基づき執筆しています。
⇒〔続きを読む〕第6回 COD IS KING

しあわせ写真

ラム酒の名前は「SCREECH」

スクリーチ・インでは、CODとキスする前に「SCREECH」というラム酒を一気に飲みほす。そして儀式はいよいよクライマックスを迎えるのだ。