旅の物語

第8回 トーテムポールの除幕式

カナダ・スティーブストン、和歌山・三尾

カナダから和歌山県美浜町の三尾(みお)地区、つまりかつての三尾村に贈られるトーテムポールは4月上旬に到着し、既に工事を終えて「カナダミュージアム」という施設の前に建立されている。今はカバーがかけられ、5月の除幕式でのお披露目を待っている状態だ。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、除幕式は限られた関係者のみで行うとのこと。残念ながら、ぜひ除幕式に来てください!というわけにはいかないのだ。

トーテムポールが建てられた「カナダミュージアム」とは、かつて三尾の人たちがカナダ・BC州の漁港スティーブストンなどに出稼ぎや移民として渡った歴史や、持ち帰った文化を紹介するための施設だ。当時建てられた洋風の建物をリノベーションし、ミュージアムとしてオープンした。三尾には2018年設立の「日ノ岬・アメリカ村」というNPO法人があって、このNPOや関係するみなさんの手によって、移民の歴史を語り継ぎ、三尾を元気にするための取り組みが続けられている。

例えば地元の中高生が「語り部ジュニア」となり、英語で三尾や移民の歴史を紹介する事業も行われている。「アメリカ村食堂 すてぶすとん」では三尾の新鮮な海の幸のほか、サーモン丼といったスティーブストンにちなんだメニューも楽しめる。もちろん「すてぶすとん」とは、三尾ふう訛りの「スティーブストン」のことだ。

「ゲストハウス 遊心庵」は、昭和の初期に建てられた和洋折衷の邸宅。部屋は4つあって8人まで宿泊できるので、僕は「カナダ好き」のみなさんとここに集まり、トーテムポールの建立を祝いながらカナダについて語り合いたいと思っていたのだが、まだちょっと難しい状況だ。しかし僕は勝手に、三尾が日本における「カナダ好き」の拠点の1つになり得るのではないかと考えている。トーテムポールだって逃げはしない。だからみんなでもうしばらく、コロナが収束する日を待ちたいと思う。(続く)

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第1回 トーテムポールがやってくる

しあわせ写真

三尾の「カナダミュージアム」

和歌山県美浜町の三尾地区にある「カナダミュージアム」。移民の歴史についての解説や、彼らが持ち帰った貴重な品々も展示されている。館内の「カフェ メイプル」でひと息入れることもできる。