旅の物語

「TSUNAGARI(ツナガリ)旅」に出よう

第7回 愛された「豆コンシロ」

函館、そしてカナダ

〔写真:旧イギリス領事館の建物の模型〕
広く真っすぐな函館の坂道の1つ、「基坂(もといざか)」のわきに
可愛らしい洋館がある。かつてのイギリス領事館で、今は「開港記念館」という名の展示施設に生まれ変わっている。

〔写真:窓から函館湾を眺めるユースデン領事の像〕
2階の旧領事執務室に足を踏み入れると、望遠鏡を手に函館の港を見下ろしている人物の像がある。リチャード・ユースデン領事。小柄な体格から「豆コンシロ=consul(領事)」の愛称で函館市民に愛されたという。

〔写真:展示されていたユースデン夫妻の写真〕
函館を走る路面電車の青柳町電停近くにある函館公園は、ユースデン領事が「病人に病院が必要なように健康な人には休養する場所が必要」と呼びかけ、市民の協力を得て建設された珍しい公園だ。ユースデン夫人も遊郭で働く女性の自立のため、西洋式の洗濯方法の指導を買ってでるなど夫妻そろって日英の「架け橋役」として尽力した。

〔写真:北海道を代表する花とライラック〕
ライラックと言えば「さっぽろライラックまつり」でも知られる北海道を代表する花だが、もともと日本にはなかった。明治時代にアメリカから入って来て広まったが、それより前の1879年、函館公園の開園記念にと北海道で最初にイギリスからライラックを持ち込んだのがユースデン夫人だった。そんな夫妻が任期を終えて帰国する際には、市民も参加して盛大な送別会が開かれたそうだ。

〔写真:旧イギリス領事館の一室〕
日本でいち早く外国に対して開かれた函館には、アメリカ、ロシア、フランス、オランダ、ドイツなど14カ国の領事館が置かれたが、幕末から昭和に至る75年間も領事館を置き続けたのはイギリスだけなのだという。帰国後、ロンドン郊外で暮らしたユースデン夫妻は、その自宅を「ホクカイドー」と名付け、遠く離れたかつての任地を懐かしんでいたそうだ。
⇒〔続きを読む〕第8回 世界一周と赤レンガ倉庫

しあわせ写真

旧イギリス領事館

今は開港記念館となっている旧イギリス領事館内に展示されていた建物の模型。いかめしさが感じられない愛らしい建物だ。