旅の物語

メープルシロップ ワンダーランド

第3回 砂糖小屋のソーセージ

東京都

カナダ・オンタリオ州のシュガー・シャック「ウィーラーズ・パンケーキ・ハウス」では、自慢のパンケーキにメープルシロップで甘く味付けしたソーセージが添えられていた。ここで、メープルシロップの甘味とソーセージやベーコンがものすごくあうということをきちんと説明しておきたい。ただし、口で言うだけでは説得力に欠けるので、実際に自分で料理してみることにした。メープルシロップで味付けしたベーコンとソーセージのサンドイッチだ。

用意するのは、日本でも普通に購入できる「Canada No.1 ミディアム」のメープルシロップ。なかなか手に入らないエキストラ・ライトを前提にしても仕方がないし、そもそも「ミディアム」の方がコクがあってこうした料理には向いているのだ。

サンドイッチに使うのはライ麦パンなどをお勧めしたい。パンの香ばしさといい具合の固さがメープルシロップの甘味にぴったりマッチする。柔らかい食パンみたいなのは、メープルシロップが染み込みすぎてベチャッとした感じになってしまう。

ベーコンやソーセージは、普通にスーパーで売っているもので十分。ベーコンは少し厚みがあった方がゴージャスなので、スライスされたものよりブロックのベーコンの方が僕は好きだ。ソーセージは、ふた袋いくら、みたいな、これまたスーパーにある普通ものでまったく問題ない。
さて、ここからが僕のオリジナルなんだけど、ある時、たまたま冷蔵庫の中で発見した菜の花をサンドイッチに使ってみたところ、これが偶然にもメープルシロップと抜群の組み合わせだった。

サンドイッチに挟む野菜を探していて何となく「採用」してみただけだけれど、メープルシロップの甘味と菜の花のほどよい苦味がなんとも言えないバランスを生み出してくれる。
まずはフライパンでベーコンとソーセージを炒めるところから。ソーセージは縦に半分に切ってみた。そうするとソーセージから油が出てくるし、ベーコンからも油が出るのでサラダオイルは不要だ。

写真の演出上、フライパンの真ん中に菜の花を置いたれど、既に茹でてあるので本当は炒める必要はない。柔らかくなりすぎてしまう。やはり菜の花はシャキシャキ感を大切にしたい。

ここでメープルシロップを投入する。フライパンの上で温められ、泡立ってくるとキッチンになんとも言えない甘い香りがふわふわ立ち込め、空気までがおいしく感じられる。
カメラのレンズが曇ってしまったが、ベーコンがツヤツヤになってきて、メープルシロップはカラメル色を強くしていって、これはもう何ともたまらない光景だ。

1つ説明を忘れていた。このサンドイッチには、バターみたいに塗るタイプのクリームチーズを使うことをお勧めしておきたい。柔らかいクリームチーズをたっぷりめにパンに塗っておき、ベーコンやソーセージ、それに菜の花を「サンド」する。
ちなみにベーコンのサンドイッチの方は、中にツブツブの塩をほんの少しだけふりかけてみた。これで味がぐっと引き締まる。ソーセージの方はライ麦パンに挟んでみたけれど、これも正解だった。やっぱりパン選びも重要なポイントだ。

そう言えば、以前取材させてもらったケベック・シャルルボアの日本人シェフ、ハンク鈴木さんは、メープルシロップとワサビを組み合わせた鈴木さんオリジナルのソースについて説明してくれた。
名づけて「ソース・ジブ」。古都・金沢の伝統料理「治部煮(じぶに)」からヒントを得たと言っていた。

 

菜の花のほどよい苦味やワサビの辛味が、メープルシロップの上品な甘味を一層引き立ててくれるという点が共通しているのだ。「治部煮」は鴨肉を使うから、次に僕が挑戦すべき料理は、ソース・ジブのチキンソテーとか、そんなものかもしれない。
どうせならチューブじゃなくて、本物のワサビを使いたい。でも、こういう手の込んだことをして長時間、台所を占領していると、怒られるんだよなあ。せめて後片付けはきちんとやらないといけない。料理というか、これは家庭内で平和に生きていく上での重要な基本動作なんだ。

この記事は2014年ごろの取材に基づき、カナダシアターhttps://www.canada.jp/に掲載したものを一部、加筆・修正しています。

⇒〔続きを読む〕第4回 ハード・シュガーとの邂逅

しあわせ写真

僕も料理をしてみた

メープルシロップを使って僕も料理をしてみた。ベーコンやソーセージ、つまり肉は甘いメープルシロップと相性がいいのだ。