旅の物語

日本・カナダ TSUNAGARIの物語

第2回 三尾のためのトーテムポール

カナダ・スティーブストン、和歌山・三尾

2021年1月26日。カナダのバンクーバーで、和歌山県の三尾へとトーテムポールを送り出すセレモニーが行われた。ポールの作者である先住民アーティスト、ダレン・イエルトンさんは、集まった人々を前にセレモニーの目的をこう告げた。「これからの道のりが清く開けたものであるよう、そしてトーテムポールが無事に日本に届けられるように」。〔写真=中村マント氏(Manto Artworks)撮影〕

トーテムポールは単なる木の彫刻ではない。一族の物語、祖先が体験した歴史、族長の徳や功績などを巨木に刻み、広くみんなに知らしめることを目的としている。だから同じ形の彫刻をつくることはできても、物語や魂が込められていなければ似て非なるもの、本物のトーテムポールなどでは決してないのだ。〔写真=バンクーバーのUBC人類学博物館に展示されている古いトーテムポール〕

「和歌山県の三尾に向けて出発します」。イエルトンさんがポールが立てられるべき場所をみんなに伝えた。ポールは三尾に立てられるためだけに生み出された。もし三尾以外の地にたてられたら、それはトーテムポールではない。例えば神社から鳥居が抜き取られたら、つまりあるべき土地から引きはがされたら、その瞬間から鳥居はただの乾いた木の構築物になってしまうだろう。〔写真=中村マント氏(Manto Artworks)撮影〕

祖先から伝えられた先住民の歌が、三尾に旅立とうとするトーテムポールに贈られる。100年を超える三尾と漁港スティーブストン、そして日本とカナダのTSUNAGARI(ツナガリ)は、三尾出身の工野儀兵衛(くの・ぎへい)という人物が明治の頃に太平洋を渡ったことから始まった。その思いを継いで2018年10月に「NPO法人日ノ岬・アメリカ村」のメンバーが、翌年には三尾の子供たちが父祖が暮らした地を訪れたことにより、三尾のためだけのトーテムポールづくりが動き出していく。(続く)
〔写真=中村マント氏(Manto Artworks)撮影〕

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第3回 フレーザー川にサケがわく

 

しあわせ写真

トーテムポールを三尾へと送り出すセレモニー

太平洋を渡って三尾へと旅立つトーテムポールに、先住民の歌が贈られた。